物体の運動について、以下の3つの法則が成り立つ。
全ての質点は外力が働かない限り、 静止あるいは等速直線運動をする。
質点の運動量の変化は加えられた力に沿って起こり、 かつ微小時間におけるその単位時間当たりの変化の大きさは加えられた力の大きさに等しい。 即ち、 \begin{equation} \label{EOM} \frac{d \bs{p}}{dt}=\bs{F} \end{equation} ただし \begin{equation} \label{mom} \bs{p}:=m \bs{v} \end{equation} である。(※:=は左辺を右辺で定義するという意)
すべての作用に対して、等しく、 かつ反対向きの反作用が常に存在する。
有名なニュートンの運動の法則です。第2法則が所謂運動方程式 に対応します。
(\ref{EOM})式はベクトルの微分方程式です。 なぜ、ベクトルや微分を使う必要があるのでしょうか。 結論から言うと、物体の運動を記述するために、 ベクトルや微分が都合がよいからです。
物体の運動に関して、
速度や加速度は向きと大きさを持つ
→ベクトルで表すのが適当
時々刻々と(即ち瞬間瞬間で)運動は変化する。
→微分を使った方が便利
ざっくり説明すると以上の通りです。 例えば、物体の速度は向きと大きさを持ちます。向きと大きさを持つ量は、ただの変数では なく、ベクトルを使った方が便利だと理解できると思います。 加速度や力も同じです。
また、現実の運動では、同じ向きに物体が進行することはあまりなく 時とともに、速度の向きや大きさを変えていきます。 この、瞬間における変化を記述するためには、微分が必要と言わけです。
質量が定数の場合、(\ref{EOM})式は \begin{equation} m \frac{d^2 \bs{x}}{dt^2}=\bs{F} \end{equation} のように、左辺はよく知られた質量と加速度の積になります。しかし、そうならない 場合もあります。
質量が定数でない場合、(\ref{EOM})式は \begin{equation} m \frac{d^2 \bs{x}}{dt^2}+\frac{d m}{dt}\bs{v} =\bs{F} \end{equation} と表せる。
導出は積の微分公式を使っただけなので、さほど難しくはないと思います。 質量が変化する状況というのは、例えば、燃料を噴出して 軽くなりながら運動する場合などです。
第2法則(運動方程式)において、\(\bs{F}=0\)の場合を考えると \(\bs{v}=(定数)\)になります。これは第1法則(慣性の法則)と同値なように思えますが、 厳密には違います。
第1法則は厳密には二つの主張に分けられる。
(i)外力が\(0\)ならば、物体の速度は定数
(ii)(i)が成り立つ系が現実に存在する。(慣性系の存在の主張)
上記のように、第1法則は二つの主張に分けられます。(i)の部分は運動方程式の \(\bs{F}=0\)の場合と同値です。しかし、(i)の主張ですが、 非慣性系では見かけの力が働くため、成り立ちません。
加速度運動をしている系では、見かけの力が働き、 外力が\(0\)でも物体の速度が一定とはかぎらない。 このような系を非慣性系と呼ぶ。
慣性の法則が成り立つのは、慣性系のみです。ところが、地球をはじめ、回転している物体は 遠心力という見かけの力が働くため、慣性系ではありません。 地球上はおろか、太陽系も、銀河系もそうです。回転しているので、非慣性系です。
つまり、我々が知る限り、慣性の法則が成り立つ場所はないわけです。しかし、 それでは困るので、第1法則では慣性系の存在を主張しているというわけです。