マクスウェル方程式にはそれぞれ微分形と積分形と呼ばれる表式がある。
ここまでで一通りマクスウェル方程式について説明しましたが (まだの人はマクスウェル方程式の紹介からどうぞ) 微分形と積分形についてここでは整理します。両者はほぼ同じ意味ですが、 それぞれ利点と欠点があるため使い分けが必要です。
ガウスの法則について、積分形は \begin{equation} \label{Gaussintform} \int_{S} \bs{E}(\bs{r}) \cdot \bs{n}(\bs{r}) \mathrm dS =\frac{Q}{\varep_{0}} \end{equation} であり、微分形は \begin{equation} \label{Gaussdiffform} \nabla \cdot \bs{E}(\bs{r})=\frac{\rho(\bs{r})}{\varep_{0}} \end{equation} である。
アンペール・マクスウェルの法則について、積分形は \begin{equation} \label{AnpandMaxintform} \oint_{C} \bs{B}(\bs{r}) \cdot d \bs{r} = \mu_{0} I + \varep _{0}\mu_{0} \int_{S} \pdiff{\bs{E}}{t} \cdot \bs{n}(\bs{r}) dS \end{equation} であり、微分形は \begin{equation} \label{AnpandMaxdiffform} \nabla \times \bs{B}(\bs{r},t)= \mu_{0} \bs{j}(\bs{r},t)+\varep _{0}\mu_{0} \pdiff{\bs{E}}{t}(\bs{r},t) \end{equation} である。
積分形のマクスウェル方程式の利点は式の意味が見えやすく、 系に対称性がある場合、簡単に計算ができること。
ここでは積分形の具体例から引用して \begin{equation} \int_{S} \bs{E}(\bs{r}) \cdot \bs{n}(\bs{r}) \mathrm dS =\frac{Q}{\varep_{0}} \tag{\ref{Gaussintform}} \end{equation} に注目してみます。この形は高校物理でも似たような形の記述があり、 ガウスの法則の導入としては、微分形から入るよりも積分形から入った方が理解しやすく、 意味も見やすいと思います。
また、特に電場が球対称だと分かっている場合は左辺の積分を \(S\)を半径\(r\)の球面で行うことで \begin{equation} \int_{S} \bs{E}(\bs{r}) \cdot \bs{n}(\bs{r}) \mathrm dS =4 \pi r^2 |\bs{E}|(r) \end{equation} となり、球対称性からクーロンの法則と同じ形 \begin{equation} \bs{E}(\bs{r}) =\frac{1}{4 \pi \varep_{0}} \frac{Q}{r^2} \bs{\hat{r}} \end{equation} に帰着できるなど、対称性がある場合、容易に積分を実行して結果を得ることが できます。このため、テストなどの問題を解く上では積分形を使うことが多々あります。
微分形のマクスウェル方程式の利点は境界条件を考慮した 現実的な計算ができること。また、電磁波の波動方程式を扱うことができる。
例えば微分形として \begin{equation} \nabla \cdot \bs{E}(\bs{r})=\frac{\rho(\bs{r})}{\varep_{0}} \tag{\ref{Gaussdiffform}} \end{equation} について考えてみます。(\ref{Gaussdiffform})式のように、マクスウェル方程式は微分方程式なので、 運動方程式での初期条件と同じく、何か条件を課さなければ解くことができません。
現実の問題では、ある位置における電場や磁場の値が決まっていることが多いので、 これを条件として使います。これを境界条件と呼びます。 (初期条件がある時間における速度や変位を定める条件であることと対応する)
一方で積分形は微分方程式ではないので、与えられた境界条件に合う結果を出すことに関しては およそ役に立ちません。つまり、現実的な問題を解く上で重要なのは微分形というわけです。
また、微分形のマクスウェル方程式は、組み合わせることで電磁波の波動方程式に 変化します。これについて詳しくは→電磁波