二階線形非同次方程式 \begin{equation} \label{2linerdiffeq} \frac{d^2 x}{dt^2}(t)+P(t) \frac{d x}{dt}(t)+Q(t) x(t) =R(t) \end{equation} のうち、係数(\(P(t)\)や\(Q(t)\))が定数のもの \begin{equation} \label{2linerdiffeq2} \frac{d^2 x}{dt^2}(t)+ a \frac{d x}{dt}(t)+b x(t) =R(t) \end{equation} を定数係数二階線形非同次微分方程式と呼ぶ。
非同次形の微分方程式です。非同次というのは、右辺が\(0\) ではなくて、\(R(t)\)のように\(t\)の関数になっているものを指します。(「線形」や「同次」 の意味については微分方程式の基本事項の記事に説明があります。)
物理を学ぶ上では定数係数の場合を押さえておけば十分でしょう。 特に、\(a=2 \gamma\)、\(b=\omega_{0}^2\)、\(R(t)=f(t)\)とおいた \begin{equation} \label{2linerdiffeq3} \frac{d^2 x}{dt^2}(t)+ 2\gamma \frac{d x}{dt}(t)+\omega _{0} ^2 x(t) =f(t) \end{equation} が強制振動 の運動方程式になっていて応用上有用です。 この微分方程式について簡単にまとめました。
空気抵抗を含むバネの振動について、 これに周期的な外力を加えて振動させている時、運動方程式は \begin{equation} m\frac{d^2 x(t)}{dt^2}=-kx(t)- \kappa \frac{dx(t)}{dt} +F\cos \omega t \end{equation} で表される。ここで\(\gamma := \frac{\kappa}{2m}\)、 \(\omega _{0}:=\sqrt{\frac{k}{m}}\)、そして\(f(t):=\frac{F}{m} \cos \omega t\)とおくと、 \begin{equation} \frac{d^2 x}{dt^2}(t)+ 2\gamma \frac{d x}{dt}(t)+\omega _{0} ^2 x(t) =f(t) \tag{\ref{2linerdiffeq3}} \end{equation} のように変形でき、これは二階線形非同次微分方程式になっている。
外力があるもとでの振動は、基本強制振動になります。ちなみに、外力が周期的でない場合でも、フーリエ変換 によって展開すると、各成分は周期的だと思えます。
原子に捕縛されている電子(価電子)は以下の運動方程式に従う(ローレンツ模型) \begin{equation} m\frac{d^2 x(t)}{dt^2}+m \gamma \frac{dx(t)}{dt}+m \omega_{0}^2 x(t) =-eE_{ex} \end{equation} (ただし、\(E_{ex}\)は電子にかかる電場)両辺\(m\)で割って、\(f(t)=\frac{-e E_{ex}}{m}\)と置くと \begin{equation} \frac{d^2 x(t)}{dt^2}+\gamma \frac{dx(t)}{dt}+\omega_{0}^2 x(t) =f(t) \tag{\ref{2linerdiffeq3}} \end{equation} の形になる。これは二階線形非同次微分方程式である。
関数\(x(t)\)が微分方程式(\ref{2linerdiffeq2}) の解であるからといって、その定数倍(\(y(t)=C x(t)\)(ただし\(C \neq 1\))) は(\ref{2linerdiffeq2})式 の解にはならない。
今回は非同次であるため、同次の時に成り立っていた性質のうちいくつかは成り立たなく なっています。この事実は、実際に代入すると確認できます。
非同次微分方程式(\ref{2linerdiffeq2}) の解\(x_{1}(t)\)と、同次微分方程式の解\(x_{2}(t)\)について、 その和\(y(t)= x_{1}(t)+ x_{2}(t)\)も (\ref{2linerdiffeq2})式 の解。
これは非同次方程式全般で成り立つ性質で重要なものです。後述するように、一般解の導出にも 使われます。
(\ref{2linerdiffeq})式の左辺に\(y(t)= x_{1}(t)+ x_{2}(t)\)を代入する。 \begin{eqnarray} & \ &\frac{d^2 y}{dt^2}+a \frac{d y}{dt}+b y \nonumber \\ &=& \left( \frac{d^2 x_{1}}{dt^2}+a \frac{d x_{1}}{dt}+b x_{1} \right) \nonumber \\ &+& \left( \frac{d^2 x_{2}}{dt^2}+a \frac{d x_{2}}{dt}+b x_{2} \right) \nonumber \\ &=&R(t)+0 \nonumber \\ &=&R(t) \quad (\because C_{1}+C_{2}=1) \end{eqnarray} 最後から二つの目の行で、\(x_{1}\)と\(x_{2}\)が満たす条件式 (\(\frac{d^2 x_{1}}{dt^2}+a \frac{d x_{1}}{dt}+b x_{1}=R(t), \frac{d^2 x_{2}}{dt^2}+a \frac{d x_{2}}{dt}+b x_{2}=0\)) を使った。
以下の二階線形非同次微分方程式 \begin{equation} \frac{d^2 x}{dt^2}(t)+a \frac{d x}{dt}(t)+b x(t) =R(t) \tag{\ref{2linerdiffeq}} \end{equation} の一般解は \begin{equation} \label{generalsolution} x_{g}(t)=x_{R(t)=0}(t)+x_{s}(t) \end{equation} である。ただし、\(x_{s}\)は特殊解を表し、 \(x_{R(t)=0}\)は右辺が\(0\)の時の一般解を表す。
非同次微分方程式の一般解を求める常套手段であり、かつこの方法は定数係数でなくても有効です。 特殊解を最低一つ見つける必要がありますが、あとは非同次微分方程式の一般解さえ用意できれば求まるので便利な方法です。
ここではなぜ(\ref{generalsolution})式が一般解になっているのかを証明します。
(\ref{2linerdiffeq})式の一般解を\(x_{g}(t)\)とおき、特殊解を \(x_{s}(t)\)とおく。すると、これらの差\(X(t)=x_{g}-x_{s}\)は 同次微分方程式 \begin{equation} \label{diffeq} \frac{d^2 x}{dt^2}(t)+a \frac{d x}{dt}(t)+b x(t) =0 \end{equation} の解になる。なぜなら右辺に\(X(t)\)を代入すると、 \begin{eqnarray} & \ &\left( \frac{d^2 }{dt^2}+a \frac{d }{dt}+b \right)X(t) \nonumber \\ &=&R(t)-R(t)=0 \end{eqnarray} であるからである。さて、(\ref{diffeq})式の一般解(\(x_{R(t)=0}\))は その一般性から必ず\(X(t)\)に等しい。以上により、 \(x_{R(t)=0}=x_{g}-x_{s}\)を\(x_{g}\)について解くと、 \begin{equation} x_{g}(t)=x_{R(t)=0}(t)+x_{s}(t) \tag{\ref{generalsolution}} \end{equation} とわかる。