定数係数二階線形微分方程式(同次)

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物理での具体例(レベル1)

解の性質(レベル1)

一般解(レベル1)

注意(レベル1)

定数係数二階線形微分方程式(同次)

二階線形の同次微分方程式 \begin{equation} \frac{d^2 x}{dt^2}(t)+ P(t) \frac{d x}{dt}(t)+Q(t) x(t) =0 \end{equation} のうち、係数(\(P(t)\)や\(Q(t)\))が定数のもの \begin{equation} \label{2linerdiffeq} \frac{d^2 x}{dt^2}(t)+ a \frac{d x}{dt}(t)+b x(t) =0 \end{equation} を定数係数二階線形同次微分方程式と呼ぶ。

この形の微分方程式は頻出です。特に、物理では\(a=2 \gamma\)、\(b=\omega_{0}^2\)とおいた \begin{equation} \label{2linerdiffeq2} \frac{d^2 x}{dt^2}(t)+ 2\gamma \frac{d x}{dt}(t)+\omega _{0} ^2 x(t) =0 \end{equation} が減衰振動 の運動方程式になっていて応用上有用です。特に、\(\gamma=0\)の場合 にはいわゆる「単振動の微分方程式」になります。 →単振動の微分方程式

一般解は\(\gamma\)と\(\omega_{0}\)の大小により、3パターンに分類されます。

物理での具体例(レベル1)

具体例(力学)

空気抵抗を考えた場合のばねの振動の運動方程式 \begin{equation} \label{dampedvibration} m\frac{d^2 x}{dt^2}(t)=-kx(t)- \kappa \frac{dx(t)}{dt} \end{equation} について、\(\gamma := \frac{\kappa}{2m}\)、 \(\omega _{0}:=\sqrt{\frac{k}{m}}\)と置くと \begin{equation} \frac{d^2 x}{dt^2}(t)+ 2\gamma \frac{d x}{dt}(t)+\omega _{0} ^2 x(t) =0 \tag{\ref{2linerdiffeq2}} \end{equation} のように変形できる。これは一階線形同次微分方程式。

具体例(回路)

直流電源に繋がれたRLC回路において、 \begin{equation} L\frac{d I}{dt}+RI+\frac{Q}{C}=V \end{equation} が成り立つ。(ただし\(L\)は自己インダクタンス、\(C\)は電気容量) 両辺時間で微分すると、 \begin{equation} L\frac{d^2 I}{dt^2}+R \frac{dI}{dt}+\frac{I}{C}=0 \end{equation} 最後に\(\gamma := \frac{R}{2 L}\)、 \(\omega _{0}:=\frac{1}{\sqrt{LC}}\)と置くと \begin{equation} \frac{d^2 x}{dt^2}(t)+ 2\gamma \frac{d x}{dt}(t)+\omega _{0} ^2 x(t) =0 \tag{\ref{2linerdiffeq2}} \end{equation} の形に帰着でき、これは一階線形同次微分方程式になっている。

解の性質(レベル1)

解の性質その1

関数\(x(t)\)が微分方程式(\ref{2linerdiffeq}) の解である時、その定数倍(\(y(t)=C x(t)\))も(\ref{2linerdiffeq})式 の解。

これは代入すれば、簡単に解になっていることは確認できます。一見当然の性質のように 思えますが、この性質は同次でなければ成り立ちません。同次とは各項の\(x\)の指数が同じ (今回の場合は1)という意味です。

解の性質その2

関数\(x(t)\)が微分方程式(\ref{2linerdiffeq}) の解である時、その線形結合(\(y(t)=C_{1} x_{1}(t)+C_{2} x_{2}(t)\))も(\ref{2linerdiffeq})式 の解。

線形結合とは、解を定数倍して足し合わせたもののことを言います。線形結合で作られた解を 解の重ね合わせと呼んだりもします。

証明

(\ref{2linerdiffeq})式の左辺に\(y(t)=C_{1} x_{1}(t)+=C_{2} x_{2}(t)\)を代入する。 \begin{eqnarray} & \ &\frac{d^2 y}{dt^2}+a \frac{d x}{dt}+b y \nonumber \\ &=& C_{1} \left( \frac{d^2 x_{1}}{dt^2}+a \frac{d x_{1}}{dt}+b x_{1} \right) \nonumber \\ &+& C_{2}\left( \frac{d^2 x_{2}}{dt^2}+a \frac{d x_{2}}{dt}+b x_{2} \right) \nonumber \\ &=&0 \end{eqnarray} 最後の行で、\(x_{1}\)と\(x_{2}\)が解になっているという仮定 (\(\frac{d^2 x_{1}}{dt^2}+a \frac{d x_{1}}{dt}+b x_{1}= \frac{d^2 x_{2}}{dt^2}+a \frac{d x_{2}}{dt}+b x_{2}=0\)) を使った。

一般解(レベル1)

一般解

以下の定数係数の二階線形同次微分方程式 \begin{equation} \frac{d^2 x}{dt^2}(t)+ 2\gamma \frac{d x}{dt}(t)+\omega _{0} ^2 x(t) =0 \tag{\ref{2linerdiffeq2}} \end{equation} の一般解は\(\gamma\)と\(\omega _{0}\) の大小で3パターンに分けられる。 \( |\gamma^2 -\omega _{0} ^2|= \Omega ^2 \)として、

i)\(\gamma>\omega _{0}\)の時 \begin{equation} x(t)=e^{-\gamma t}(Ae^{ i\Omega t}+Be^{- i\Omega t}) \end{equation} ii)\(\gamma<\omega _{0}\)の時 \begin{equation} x(t)=e^{-\gamma t}(Ae^{ \Omega t}+Be^{- \Omega t}) \end{equation} iii)\(\gamma=\omega _{0}\)の時 \begin{equation} x(t)=e^{-\gamma t}(A+Bt) \end{equation} ただし、\(A\)と\(B\)は定数。

上記の通り、一般解は3パターンあります。証明方法として、定数変化法 と呼ばれる処方をつかいます。この方法はこれからも何度か使うので、頭の片隅において 置きましょう。この解の物理的な意味については→こちらから

場合分けがあるので証明は少し長くなります。ところでころで区切って方針を 整理します。

証明

定数変化法を使うために、まずは(\ref{2linerdiffeq2})式 の解を一つ見つけます。

\(C\)を定数として、以下の解の形を予想する。 \begin{equation} \label{solutionex} x(t)=C e^{\lambda t} \end{equation} (気持ちとしては、単振動の時とさほど解の形は変わらないだろうという打算がある。)

これを代入して \begin{equation} \left( \frac{d^2}{dt^2}+ + 2\gamma \frac{d}{dt}+\omega _{0} ^2 \right) (e^{\lambda t})=0 \end{equation} 計算すると \begin{equation} (\lambda ^2 +2\gamma \lambda +\omega _{0} ^2 )e^{\lambda t}=0 \end{equation} を得る。

ここで\(e^{\lambda t} \neq 0\)より、両辺を\(e^{\lambda t}\)で割れば \begin{equation} \lambda ^2 +2\gamma \lambda +\omega _{0} ^2 =0 \end{equation} が得られる。これを\(\lambda\)の二次方程式とみると、その解は \begin{equation} \lambda= -\gamma \pm \sqrt{\gamma^2 -\omega _{0} ^2} \end{equation} であって、逆に、\(\lambda\)がこの条件を満たしていれば、\(e^{\lambda t}\) は(\ref{2linerdiffeq2})式の解になる。

解が見つかったところで、定数変化法で一般解を探しに行きます。

ここで突然だが、(\ref{solutionex})式の定数部分を任意\(f(t)\)に取り換えて \begin{equation} \label{arbitraryfunc} x(t)=f(t)e^{\lamp t} \end{equation} を用意する。ただし、\(\lamp=-\gamma + \sqrt{\gamma^2 -\omega _{0} ^2}\)とする。 すると、\(f(t)\)の任意性より、\(x(t)\)もまた任意の関数になる。ゆえに \(x(t)\)は一般解を含む。(このように定数部分を任意関数に取り換えて一般解を探す方法を 定数変化法といいます。)

これを(\ref{2linerdiffeq2})式に代入して、一般解の形を探る。 \begin{eqnarray} \frac{d^2 }{dt^2}f(t)&e^{\lamp t}&+ 2\gamma \frac{d }{dt}f(t)e^{\lamp t} \nonumber \\ + \omega _{0} ^2& f(t)& e^{\lamp t}=0 \end{eqnarray} あとは積の微分公式をつかって計算していく。実際やってみると \begin{eqnarray} & \ &f''(t)e^{\lamp t}+2f'(t) (e^{\lamp t})'+2 \gamma f'(t) e^{\lamp t} \nonumber \\ &+&f(t) \left( \frac{d^2 }{dt^2}+ 2\gamma \frac{d }{dt}+\omega _{0} ^2 \right) e^{\lamp t} \nonumber \\ & \ &=0 \end{eqnarray} のように変形できる。

さて、\(e^{\lamp t} \)は(\ref{2linerdiffeq2})式の解だったので、 \((\frac{d^2 }{dt^2}+ 2\gamma \frac{d }{dt}+\omega _{0} ^2)e^{\lamp t}=0\)である。ゆえに 残るのは、 \begin{eqnarray} \left( f''(t)+(2\lambda_{+} +2\gamma)f'(t)\right) e^{\lambda_{+} t}=0 \end{eqnarray} である。

\(e^{\lambda_{+} t} \neq 0\)なので、これはは即ち \begin{eqnarray} f''(t)+(2\lambda_{+} +2\gamma)f'(t)=0 \end{eqnarray} ということになる。 \(f'(t)=F(t)\)とおくと \begin{eqnarray} F'(t)+(2\lambda_{+} +2\gamma)F(t)=0 \end{eqnarray} のように一階微分の方程式に帰着できる。

ここからが証明の大詰めです。\(\gamma\)や\(\omega_{0}\)の値で場合分けをして 一般解を導きます。

(I)\(2\lambda_{+} +2\gamma \neq 0\)、即ち\(\gamma \neq \omega _{0}\)の時

\(F(t)\)の解は \begin{eqnarray} F(t)=C_{0}e^{-(2\lambda_{+} +2\gamma)} \end{eqnarray} になる。ただし、\(C_{0}\)は複素定数。 \(f'(t)=F(t)\)だったので\(f(t)\)を求めるにはこれの両辺を積分すればよく、 \begin{eqnarray} f(t)=\frac{C_{0}}{-(2\lambda_{+} +2\gamma)}e^{-(2\lambda_{+} +2\gamma)}+C_{1} \end{eqnarray} を得る。

今、\(C_{2}=\frac{C_{0}}{-(2\lambda_{+} +2\gamma)}\)とおきなおし、 さらに\(\lambda_{+}\)の定義より、対になるように \(\lambda_{-}=-\gamma - \sqrt{\gamma^2 -\omega _{0} ^2}\)と定義すれば \(2\lambda_{+} +2\gamma=2\sqrt{\gamma^2 -\omega _{0} ^2}=\lambda_{+}-\lambda_{-}\)が成り立つことを考えると、最終的に \begin{eqnarray} f(t)=C_{2}e^{-(\lambda_{+}-\lambda_{-})}+C_{1} \end{eqnarray} あとはこれを(\ref{arbitraryfunc})式にいれると \begin{eqnarray} x(t)=e^{-\gamma t}(C_{1}e^{\sqrt{\gamma^2 -\omega _{0} ^2} t}+C_{2}e^{- \sqrt{\gamma^2 -\omega _{0} ^2} t}) \end{eqnarray} を得る。あとは根号の中身が正負かどうかの場合わけで、(i)と(ii)の場合は一般解になることが示せた。



(II)\(2\lambda_{+} +2\gamma = 0\)、即ち\(\gamma = \omega _{0}\)の時

\(F(t)\)の解は \begin{equation} F(t)=C'_{0} \end{equation} ただし、\(C'_{0}\)は定数。\(f'(t)=F(t)\)だったので\(f(t)\)を求めるには両辺を積分すればよく、 \begin{equation} f(t)=C'_{0}t+C'_{1} \end{equation} あとは\(\gamma = \omega _{0}\)より\(\lambda_{+}=\gamma\)ということに注意すれば この\(f(t)\)を(\ref{arbitraryfunc})式に代入することで(iii)の場合にあたる解 \begin{equation} x(t)=e^{-\gamma t}(C'_{1}+C'_{0}t) \end{equation} を得る。

注意(レベル2)

\(e^{-\gamma t}\)のフーリエ変換?

\(e^{-\gamma t}\)は、\(t \to -\infty\)で 発散より、絶対可積分ではない。ゆえにフーリエ変換不可能

単振動の時、解をフーリエ変換して求めることができましたが、 今回の解はフーリエ変換不能なので注意が必要です。万能に見えるフーリエ変換も ここら辺に限界が見えます。

フーリエ変換可能性

関数\(x(t)\)が絶対可積分 \begin{equation} \int_{-\infty}^{\infty} |x(t)| dt < \infty \end{equation} ならば、フーリエ変換可能。

減衰項がある場合、フーリエ変換ができないので、代わりに、ラプラス変換を使います。 \(\gamma=0\)の時は、単振動の微分方程式に一致し、フーリエ変換可能です。