電荷密度\(\rho(\bs{r},t)\)、電流密度\(\bs{j}(\bs{r},t)\)について以下が成り立つ。 \begin{equation} \label{conservation} \pdiff{\rho}{t}(\bs{r},t)+\nabla \cdot \bs{j}(\bs{r},t)=0 \end{equation} これを微分型(微分形)の電荷保存則と呼ぶ。
電荷保存則は電磁気学において重要なのはもちろんですが、この形の方程式は
今後量子力学など様々な分野でも顔を出します。電荷保存則について簡単にまとめました。
電荷密度\(\rho\)、電流密度\(\bs{j}\)について詳しくは→
電荷密度、電流密度からどうぞ。
領域\(V\)内の電荷\(Q\)、及び\(V\)の表面\(S\)を通過する 電流密度\(\bs{j}(\bs{r})\)について以下が成り立つ。 \begin{equation} \label{intconservation} \frac{dQ}{dt}+\int_{S} \bs{j}(\bs{r}) \cdot \bs{n}(\bs{r}) dS=0 \end{equation} (ただし、 Sは領域\(V\)の表面全体) これを積分型(積分形)の電荷保存則と呼ぶ。
電荷保存則の積分形です。左辺の\(Q\)は積分をあらわにかくと \begin{equation} \label{chargedens} Q=\int_{V} \rho(\bs{r},t) \mathrm dV \end{equation} となります。
微分形と積分形は見た目が大きく異なりますが、両者は同じことを言っています。積分形から微分形への 導出は下のギモンを参考にしてください。微分形の意義や必要性に ついてはこちらの記事を参照。
電荷\(q\)と電流\(I\)といえば、関係式\(I=\frac{dq}{dt}\)の両辺を積分した \begin{equation} \label{currentdef} q=\int I dt \end{equation} が有名ですが、この\(q\)と (\ref{chargedens})式の\(Q\)では意味が異なるので注意してください。
電流の定義式(\ref{currentdef})式に出てくる電荷\(q\)は、ある面を 通過した電荷。一方、電荷密度の定義式(\ref{chargedens})式の電荷\(Q\)は、 ある領域の中に溜まっている電荷。
例えば、領域\(V\)の表面から電流が流出している状況を考えます。電荷の変化を考えると 流出した(表面を通過した)電荷の量だけ領域内部に溜まっていた電荷は減少するので \begin{equation} \Delta Q=-\Delta q \end{equation} となって符号が真逆になります。
電荷保存則(\ref{conservation})式は定常電流の保存則の拡張であって、 その意味は文字通り電荷が保存する、つまり何もないところから電荷が発生・消滅しない (電荷の総量は不変)ことを表す。
定常電流の保存則とは定常電流(時間で変化しない電流)密度\(\bs{j}(\bs{r})\)について \begin{equation} \label{currentconservation} \nabla \cdot \bs{j}(\bs{r})=0 \end{equation} が成り立つという法則です。(これについて詳しくは→定常電流の保存則)
定常電流の保存則の意味は定常電流は発生したり消滅しないということでしたが、 これは時間で変化しない定常電流の場合の議論でした。現実には、静止している電荷に電場を掛けると電流を生み出せるため、 時間変化する系では電流の発生・消滅はありえます。
ただし、電荷が流れた分だけ電流になり、電流は静止すると電荷に戻るはずなので、 電荷の増減と電流の増減は直結しており、積分形 \begin{equation} \frac{dQ}{dt}+\int_{S} \bs{j}(\bs{r}) \cdot \bs{n}(\bs{r}) dS=0 \tag{\ref{intconservation}} \end{equation} ではこのことを数式で表現しているわけです。
また、(\ref{conservation})式において、電流、電荷が時間変化しない場合 \(\rho(\bs{r},t)=\rho(\bs{r})\)、\(\bs{j}(\bs{r},t)=\bs{j}(\bs{r})\)を代入すると 定常電流の保存則 \begin{equation} \nabla \cdot \bs{j}(\bs{r})=0 \tag{\ref{currentconservation}} \end{equation} に帰着されます。なので、電荷保存則は定常電流の保存則の拡張になっています。
ある3次元領域\(V\)について、その表面から電流が出入りしている状況を考える。 領域の表面から流出・流入する電流を それぞれ\(I_{out}\)、\(I_{in}\)と書くと、その差は \begin{equation} I_{out}-I_{in}=\int_{\partial V} \bs{j}(\bs{r}) \cdot \bs{n}(\bs{r}) dS \end{equation} である。(ただし、\(\partial V\)は\(V\)の表面とする)
つまり、領域内の電荷を\(Q\)とかくことにすると、この差分だけ 単位時間あたりに\(Q\)が減少(流出)するので \begin{equation} \frac{dQ}{dt}=\int_{\partial V} \bs{j}(\bs{r}) \cdot \bs{n}(\bs{r}) dS \end{equation} となる。よって、積分形(\ref{intconservation})式が示せた。
つづいて微分形を導く。これはガウスの定理より、 \begin{equation} \label{Gausstheorem} \int_{S} \bs{j}(\bs{r}) \cdot \bs{n}(\bs{r}) \mathrm dS =\int_{V}\nabla \cdot \bs{j}(\bs{r}) \mathrm dV \end{equation} なので、あとは電荷密度と電荷の関係式 \begin{equation} Q=\int_{V} \rho(\bs{r},t) \mathrm dV \tag{\ref{chargedens}} \end{equation} を積分形へ代入すれば \begin{equation} \pdiff{\rho}{t}(\bs{r},t)+\nabla \cdot \bs{j}(\bs{r},t)=0 \tag{\ref{conservation}} \end{equation} を得る。