電位と電圧

今回のギモン(クリックすると当該セクションへ)

仕事との関係(レベル1)

積分表示(レベル1)

不定性(レベル1)

電位と電圧

静電場\(\bs{E}(\bs{r})\)に対し、 \begin{equation} \label{scalerpotential} \bs{E}(\bs{r})=- \nabla \phi(\bs{r}) \end{equation} を満たす\(\phi(\bs{r})\)を静電ポテンシャル、または電位と呼ぶ。 また、二点間の電位の差 \begin{equation} \label{voltage} V_{ab}=\phi(\bs{r}_{a})-\phi(\bs{r}_{b}) \end{equation} を電位差、または電圧と呼ぶ。

高校物理でおなじみの電位ですが、大学物理では静電ポテンシャルという呼び方もします。 静電ポテンシャルについて詳しくはこちらから。 単位はよく知られているように、電位、電圧ともに[V](ボルト)です。 電位/電圧について簡単にまとめました。

仕事との関係(レベル1)

電位と電圧

静電場\(\bs{E}(\bs{r})\)中において、電荷\(q\)が 静電力のみによって位置\(\bs{r}_{a}\)から位置\(\bs{r}_{b}\)へ 移動したとき、静電力がした仕事は \begin{eqnarray} W_{a \to b}&=&q(\phi(\bs{r}_{a})-\phi(\bs{r}_{b})) \nonumber \\ \label{potentialand} &=&qV_{ab} \end{eqnarray} と表せる。

電位(静電ポテンシャル)と仕事の関係です。力学では保存力のする仕事について \(W_{i \to f}=U(\bs{r}_{i})-U(\bs{r}_{f})\)が成り立ちますが、これと同じ形の関係式です。

導出

静電力は保存力なので、その仕事は経路に依存せず、始点と終点の座標だけで決まる。 よって、位置\(\bs{r}_{a}\)から位置\(\bs{r}_{b}\)へ 移動したとき、静電力がした仕事は \begin{equation} W_{a \to b}=\int_{\bs{r}_{a}}^{\bs{r}_{b}} q \bs{E}(\bs{r}) \cdot d \bs{r} \end{equation} と書ける。ここに、静電場と静電ポテンシャル(電位)の関係式 \begin{equation} \bs{E}(\bs{r})=- \nabla \phi(\bs{r}) \tag{\ref{scalerpotential}} \end{equation} を代入すると、 \begin{equation} W_{a \to b}=q\int_{\bs{r}_{a}}^{\bs{r}_{b}} (- \nabla \phi(\bs{r})) \cdot d \bs{r} \end{equation} のようになる。あとは線積分を実際に実行すればよい。
(線積分の計算法について詳しくは→ベクトルの線積分仕事の計算)

まず、保存力は経路を好きに選んでよかったので、経路として\(\bs{r}_{a}\)から出発し、 まず\(x\)軸に平行に走り、次に\(y\)軸に平行に走り、そして\(z\)軸に平行に走って \(\bs{r}_{b}\)に至る経路を考える。このもとで \begin{eqnarray} & & \int_{\bs{r}_{a}}^{\bs{r}_{b}} (- \nabla \phi(\bs{r})) \cdot d \bs{r} \nonumber \\ &=& -\int_{x_{a}}^{x_{b}}\pdiff{\phi}{x}(x',y_{a},z_{a}) dx' \nonumber \\ & \ & -\int_{y_{a}}^{y_{b}} \pdiff{\phi}{y}(x_{b},y',z_{a}) dy \nonumber \\ & \ & -\int_{z_{a}}^{z_{b}} \pdiff{\phi}{z}(x_{b},y_{b},z') dz' \end{eqnarray} とかける。 ただし、\(x_{a},y_{a},z_{a}\)は\(\bs{r}_{a}\)の\(x,y,z\)成分で、 \(x_{b},y_{b},z_{b}\)は\(\bs{r}_{b}\)の\(x,y,z\)成分です。また、積分変数については強調するために 例えば\(x'\)のようにしてプライムをつけた。

参考:媒介変数を使わずに線積分を実行できたのは、それぞれの経路がデカルト座標軸に平行だったためです。

あとはこの積分をそれぞれ計算すればよい。項が六つでてくるが、ほとんどがキャンセルされる。 実際にやってみると \begin{eqnarray} & & \int_{\bs{r}_{a}}^{\bs{r}_{b}} (- \nabla \phi(\bs{r})) \cdot d \bs{r} \nonumber \\ &=& -\phi(x_{b},y_{a},z_{a})+\phi(x_{a},y_{a},z_{a}) \nonumber \\ & \ & -\phi(x_{b},y_{b},z_{a})+\phi(x_{b},y_{a},z_{a}) \nonumber \\ & \ & -\phi(x_{b},y_{b},z_{b})+\phi(x_{b},y_{b},z_{a}) \nonumber \\ &=& \phi(x_{a},y_{a},z_{a})-\phi(x_{b},y_{b},z_{b}) \nonumber \\ &=& \phi(\bs{r}_{a})-\phi(\bs{r}_{b}) \end{eqnarray} となり(ただし\(\bs{r}\)は座標三成分\((x,y,z)\)の略記)これを\(W_{a \to b}\)の式に代入することで \begin{eqnarray} W_{a \to b}=q(\phi(\bs{r}_{a})-\phi(\bs{r}_{b})) \end{eqnarray} を得る。つまり、電圧の定義式(\ref{voltage})より、 \begin{eqnarray} W_{a \to b}=qV_{ab} \end{eqnarray} である。

積分表示(レベル1)

電位と電圧

電位/電圧と静電場\(\bs{E}(\bs{r})\)の関係式は積分でかくと以下の通り。 \begin{eqnarray} \label{intscalerpotential} \phi(\bs{r})= -\int_{\bs{r}_{0}}^{\bs{r}} \bs{E} \cdot d \bs{r} \\ \label{intvoltage} V_{ab}=\int_{\bs{r}_{a}}^{\bs{r}_{b}} \bs{E} \cdot d \bs{r} \end{eqnarray}

(\ref{scalerpotential})式の解について、力学のポテンシャルとの類似性から (\ref{intscalerpotential})式の表式が考えられます。実際、両辺の勾配を取ると確かに解になっていることが 確認できます。(計算は上の仕事の時と同じ。また\(\bs{r}_{0}\)は \(\bs{r}\)に依存しない定ベクトルに注意。)

一方、電圧について(\ref{intscalerpotential})式の表式を使って書き下すと、 \begin{eqnarray} V_{ab}&=&\phi(\bs{r}_{a})-\phi(\bs{r}_{b}) \nonumber \\ &=& -\int_{\bs{r}_{0}}^{\bs{r}_{a}} \bs{E} \cdot d \bs{r} \nonumber \\ & & -\int_{\bs{r}_{0}}^{\bs{r}_{b}} \bs{E} \cdot d \bs{r} \nonumber \\ &=& \int_{\bs{r}_{a}}^{\bs{r}_{b}} \bs{E} \cdot d \bs{r} \end{eqnarray} であり、確かに(\ref{intvoltage})式が成り立っていることが確認できます。積分経路の始点、終点をあらわにかくのが めんどくさい時は、単に経路を\(C\)と書いて \begin{eqnarray} V=\int_{C} \bs{E} \cdot d \bs{r} \end{eqnarray} としても間違いではありません。

不定性(レベル1)

電位と電圧の不定性

電位(静電ポテンシャル)には基準をどこに取るかの不定性がある。 電圧は基準点によらず一意に定まる。

静電ポテンシャルの記事でも述べましたが、電位には定数分の不定性があります。これは (\ref{intscalerpotential})式が不定積分の形であり、積分定数の不定性があることと対応しています。 ((\ref{intscalerpotential})式が不定積分に見えない人は不定積分の記事参照)

言い方を変えると、(\ref{intscalerpotential})式は\(\bs{r}_{0}\)を好きに選んでも (\ref{scalerpotential})式の解になっている、つまり\(\bs{r}_{0}\)に対応した不定性があるということです。 これは電位でいうところの基準点の座標に対応し、普通はこれを無限遠とかに取ったりします。

一方、\(V_{ab}\)は定積分であり、\(\bs{r}_{0}\)の不定性は残っていません。なので、基準をどうとっても 値は変わらないということです。