電場\(\bs{E}(\bs{r},t)\)が時間で変化しない(時間に依らない)時、 つまり \begin{eqnarray} \pdiff{\bs{E}}{t}(\bs{r},t)=0 \end{eqnarray} の時の電場を静電場と呼ぶ。静電場は時間に依存しないので 普通は\(t\)は書かずに\(\bs{E}(\bs{r})\)と表記する。
時間で変化しない電場を特に静電場と呼びます。静電場は扱いが簡単なので電磁気の導入として 使われます。静電場の持つ性質について簡単にまとめました。
定常電流で成り立つオームの法則の微分形 \begin{eqnarray} \bs{j}(\bs{r})=\sigma \bs{E}(\bs{r}) \end{eqnarray} 及びジュールの法則の微分形 \begin{eqnarray} \omega(\bs{r})= \bs{j}(\bs{r})\cdot \bs{E}(\bs{r}) \end{eqnarray} で表れる\(\bs{E}(\bs{r})\)は静電場。
静電場についてのガウスの法則は以下の通り。
\begin{equation} \label{diffform} \nabla \cdot \bs{E}(\bs{r})=\frac{\rho(\bs{r})}{\varep_{0}} \end{equation}充電が終わったコンデンサーの電極の間に生じる電場 は静電場\(\bs{E}(\bs{r})\)である。
静電場によって生じる力(静電力)は保存力。
静電力(クーロン力)は静電場と電荷の積で書ける力のことです。
\begin{eqnarray}
\label{force}
\bs{F}(\bs{r})=q \bs{E}(\bs{r})
\end{eqnarray}
この力は中心力の重ね合わせとみなせるため、保存力です。
(この事実については中心力の記事参照。保存力の性質はこちらから。)
静電場の場合、運動方程式は
\begin{eqnarray}
m \frac{d^2 \bs{x}}{dt^2}=q \bs{E}(\bs{r})
\end{eqnarray}
のようになるので、電場を具体的に求めることができれば電場中の電荷の運動を
求めることもできます。
静電場について、以下を満たす静電ポテンシャル\(\phi(\bs{r})\)が存在する。
\begin{equation}
\label{potential}
\bs{E}(\bs{r})=-\nabla \phi(\bs{r})
\end{equation}
静電力が保存力であることから、
保存力のポテンシャルに対応する静電ポテンシャルを定義することができます。
静電ポテンシャルと電荷の積がポテンシャルになっているので両者はほぼ同じものです。 また、この記事でも述べているように、静電ポテンシャルの存在(\ref{potential})と
後述する渦なしの法則(\ref{static})式は同値(同じ意味)なので、片方を知っていればもう片方を導出できます。
静電場のエネルギーを全空間で足し上げたものを\(U\)とすると
\begin{equation}
U_{E} = \int d^3 \bs{r} \frac{\varep_{0}}{2} \bs{E}^2(\bs{r})
\end{equation}
が成り立つ。単位体積あたりでは
\begin{equation}
u_{E}(\bs{r})=\frac{\varep_{0}}{2} \bs{E}^2(\bs{r})
\end{equation}
である。
ポテンシャルエネルギーは高校では電荷が持つという理解でしたが、静電場が持つという
解釈もできます。具体的な導出は静電エネルギーの記事を参照してください。 静電場(時間で変化しない電場)について以下が成り立つ。
\begin{eqnarray}
\label{Gauss}
\nabla \cdot \bs{E}(\bs{r})&=&\frac{\rho(\bs{r})}{\varep_{0}} \\
\label{static}
\nabla \times \bs{E}(\bs{r})&=&0
\end{eqnarray}
ただし、\(\nabla\)はナブラ、\(\rho\)は電荷密度で、\(\varep_{0}\)は真空の誘電率。 静電場でのみ成り立つマクスウェル方程式の特別な場合の式です。一つ目の式が静電場の
ガウスの法則で、二つ目が静電場の渦なしの法則と呼ばれるものです。
それぞれの法則について詳しくは→ガウスの法則、
静電場の渦なしの法則 上記の二式は微分形ですが、積分形もあります。 静電場(時間で変化しない電場)について以下が成り立つ。
\begin{eqnarray}
\label{intGauss}
\int_{S} \bs{E}(\bs{r}) \cdot \bs{n}(\bs{r}) \mathrm dS &=&\frac{Q}{\varep_{0}} \\
\label{intstatic}
\oint_{C} \bs{E}(\bs{r}) \cdot d \bs{l}&=&0
\end{eqnarray}
法則の意味も簡単に整理しておきましょう。
(\ref{Gauss})式は静電場のガウスの法則と呼ばれる式で、電荷とそれが生み出す電場の関係式。
また、(\ref{static})式は静電場の渦なしの法則と呼ばれる式で静電力が保存力であることを表す。
上でも述べたように、静電場には静電ポテンシャル\(\phi(\bs{r})\)が定義でき、これを使って
(\ref{Gauss})式と(\ref{static})式を統合できます。
以下のようにかける\(\bs{E}(\bs{r})\)は(\ref{static})式を満たす。
\begin{equation}
\bs{E}(\bs{r})=-\nabla \phi(\bs{r}) \tag{\ref{potential}}
\end{equation}
これを(\ref{Gauss})式へ代入すると、(\ref{static})式と(\ref{Gauss})式を両方含む
静電ポテンシャルに関する微分方程式
\begin{equation}
\label{Poisson}
\nabla^2 \phi(\bs{r})=-\frac{\rho(\bs{r})}{\varep_{0}}
\end{equation}
が得られる。ただし\(\nabla^2=\nabla \cdot \nabla\)である。 ここでは詳しくは解説しませんが、(\ref{Poisson})式のような二階の微分方程式を特に
ポアソン方程式と呼びます。この微分方程式の性質や解法については静電ポテンシャルや
ポアソン方程式の記事を参照してください。 一般に、ベクトルの発散、回転がそれぞれ与えられたなら、微分方程式を解いて解を求める
ことができます。実際、今回の場合(\ref{Poisson})式を解くことで\(\phi(\bs{r})\)が求められます。あとは
これを(\ref{potential})式に戻すことで解の\(\bs{E}(\bs{r})\)が求まるわけです。
静電場が求まると、これを(\ref{force})式に代入し、運動方程式を考えることもできます。
静電ポテンシャルについて詳しくは→こちらからどうぞ。